エッセイ

想い出は美化される?~片想いは25年後に失恋へと変わる~②

以前、美術予備校時代の講師の先生のことを書いたのですが、そのエピソードの番外編の話、エッセイです。

単なる私の大昔の片想いの話なのですが、コイバナがお好きなあなたの暇つぶしになれたら嬉しいです。

私が片想いをしていたその方は現在、現代美術家として日本でも世界でもご活躍をされている方です。

私がその方と最後にお会いしたのはもう28年も前だと思います。

彼の留学先まで押しかけて行ってしまえば良かったんじゃないかなと、後悔することも何度もありました。

日本に帰って来ていることを知った時にも、どうにか連絡を取れたら良かったのでは……と思うこともありましたが、結局いつも行動には移せずに終わってしまいました。

今はインターネットなどを通して、ご活躍されている姿を遠くからそっと拝見しているファンの一人です。

その方のことを諦めようと思ってから25年。

私がきちんと告白をすることもなく、25年経って失恋していたんだなということを事実として受け止めたエッセイです。

前回の話はこちらからどうぞ↓

先生は大学を卒業し、私は浪人が決定。

卒業後の先生がどこで何をしているのかわからなかったのに、私が浪人した年のムサビの芸術祭で偶然再会して言葉を交わしたところで前回の話は終わりました。

浪人中の心の拠り所

浪人時代の私は、名古屋グランパスエイト(現在は名古屋グランパス)の某サッカー選手にうつつを抜かしてファンレター魔となっておりました。

若さゆえ、ですね。

実は高3の時に好きだった選手が、チームからドイツにサッカー留学をしてしまい、応援したかったのにできないという状況になっていました。

そこで、別の選手に乗り換え(!)その選手にファンレターを頻繁に書くことで、浪人時代のストレス解消にさせて頂いていたようなところもありました。(選手に失礼)

そして3月、全ての美大の入試が終わった頃、その選手が結婚した事をサッカー雑誌で知り、ある意味失恋したにも関わらず、名古屋グランパスの本拠地である愛知の大学だけ合格を勝ち取るという悲しい出来事を経験しました。笑

そして私は結局、愛知の大学へ進学するのでした。

好きな人が次から次へと増えていく

好きな選手は結婚しちゃったものの、なんとか愛知の大学からの合格を頂けたので、親元を離れ一人暮らしをさせてもらいました。

せっかく名古屋グランパスの本拠地に行ったのに、4年間サッカー観戦も練習観戦にも一度も行かなかった徹底ぶり。

可愛さ余って憎さ百倍ですよ。(ひどい)
とても好きだったのにアンチになる人の気持ちがその時少しわかったような気がします。

そして当時の私は、浪人で我慢生活を強いられていた反動か次から次へと色々な人のファンになっていきました。(単なるミーハーです)

ケイン・コスギをテレビで観てすぐにファンクラブに入り、頑張って英語でファンレターも書いて、ケインからお返事も頂きました。

ハンバーグを作るのが得意だと書いたら、お返事にはハンバーガーが好きだと書いてありました。笑

そしてファンクラブから届いたケインのブロマイドが、あまりにもゴリゴリマッチョなバストアップの半裸写真だったので衝撃を受けました。笑

間違いなく私が好きになった人の中で、一番のゴリマッチョだと思いました。

そしてケインも出演していた「忍者戦隊カクレンジャー」の映画を小さいお友達に混じりながらも観に行き、同時上映だった「ブルースワット」の方にどっぷりとハマったのです。

なぜなら。

主演俳優さんが先生に似ているように見えたからです!!!(個人の感想です)

先生の身代わりで俳優さんを好きになるなんて失礼にも程がありますが、その俳優さんもものすごく素敵だったんです。

先生本人には気持ちも伝えられず、会えず、連絡も取れない。

このように次から次へと好きな有名人が代わっていくのですが、その前に好きだった人は嫌いになったりする訳ではなく、好きが増えていくのでした。(既婚サッカー選手は除く)

(右手前の人が先生に似ている!と私が個人的に思っていた俳優さんです)

新たにファンになったのは、正木蒼二さんという俳優さんだったんですが、身長やお顔の雰囲気なども私の記憶の中の先生にとても似ていて(個人の感想です)これまたファンレターを書いてお返事を頂くなどしました。(手紙魔ですね)

その後、「ブルースワット」が終了し、次は台湾のアイドルにハマり台湾アイドル時代の金城武くんにハマって行ったのですが、それはまた別のお話で。

台湾のアイドルだったので北京語のCDがほとんどでしたが、香港のファンに向けて広東語のCDもリリースしたのがこのアルバム。

この当時、香港映画界に進出し始めたのです。

NHKBSのアジア系の生放送の歌番組にも出演し、このアルバムの中の曲を歌いましたが、「なぜその曲を選んだ?!」というような歌謡曲風の歌を歌って驚いたのも今となっては懐かしい想い出です。

本当に好きだったなあ、台湾明星時代の金城武くん。

好きになった身近な男性とは友達止まり

あれこれ色々な俳優さんにハマってはファンレターを出すということをしていた私ですが、大学に入ってから「ちょっといいな」と思う人が身近にいました。

大学の彫刻科の背の高い(186cm)人でした。

何故か彫刻科男子に縁がある。(①に登場したムサビの男友達然り)

ちなみにその人とは、完全なる友達止まりでした。

何故なら、彼には年上の彼女がいたからです。

彫刻科の彼には、私から友達になりたくて手紙(またもや手紙!)を渡したのをきっかけに話すようになり(手紙作戦が私の得意技です)彼も同じ関東から愛知の美大に進学したという事もあり、わりと意気投合。

仲の良い友達になりました。

それ以外では、もうずっと私は先生一筋。(一筋とは言えない?)

身近で好きな人は、どこにいるかわからなくても会えなくてもずっとずっと永遠に好きだろうなと思い続けていた先生でした。

大学に入ってからも続く恋心

そして大学2年の冬くらいだったでしょうか。

愛知の私の家に、ある日エアメールが届いたんです。

金城武くんの台湾の事務所宛にに週1ペースで(!)エアメールでファンレターを書いていましたが、私の元に届いたエアメールはドイツからでした。

ドイツにサッカー留学しているサッカー選手にはファンレター書いたことはありましたが、お返事ではないし…と思っていたら

なんと!差出人は先生!!!

先生からのエアメールだったんです!!!!!

私からはだいぶ前に愛知の芸大の大学生になった報告を、以前教えてもらっていた都内の住所宛に送っていた記憶がありました。

手紙には

「めぐりめぐって、ドイツの俺のところに手紙が届いた」

と書いてありました。

先生はその住所の家は引き払ってドイツへ渡ったのでしょう。

転送届けを出していたのか、九州のご実家に届いてしまったのか、ご実家からドイツに転送して頂いたのか、詳細は分からないのですが、ドイツに住む先生のところへ私の手紙が届き、そのお返事を律儀にも書いて送ってくれたと、そういう訳なのです。

思いもよらぬ便りに、心が踊りました。

先生からのエアメール

ドイツ留学をしたという先生。

日本画を専攻していたけど、ドイツの芸術大学で勉強を続けているとのこと。

シェアハウスに住んでいるようでしたし、お金もなく食べる物もパンとヨーグルトくらいで「痩せた」と書いてありました。

日本語の手紙は嬉しかったようです。

今みたいに簡単にネットやスマホで連絡が取り合える時代では無かったので、手紙も出してから届くまでのタイムラグがあります。

電話をするにも国際電話がとても高かった時代。

私も先生から手紙を貰えた喜びで、本当に舞い上がっていました。

初めて届いた手紙は、A4サイズほどの便箋2枚のとても長い手紙だったと思います。

大切に保管してあるはずなのですが、転勤などで引越しを何度も繰り返しているのと、夫に見られたくないのでしまってあり、どこに隠したのか分からなくなっており内容を確認できていません。(見つかったらエピソードを書き足すかもしれません)

私は迷わずすぐに返事を書きました。

手紙のやり取りが続く

先生の消息がわかったことが本当に嬉しかったです。

私からの手紙には、大学で勉強していること、描いている作品のこと、先生とはもう二度と会えないのではないかと思っていたことなどを書きました。

するとまた先生からの返事が届き、そこには

「作品を創り続けていれば、世界のどこかでまた会えるだろう」

と書いてありました。

先生はこの先もずっと何かしらの作品を創り続けていくんだなあと思いました。

最初は、人から聞く先生の噂

「ハーレーに乗っていてサーファーで剣道部」

という言葉から勝手にイメージを作り上げて、チャラい人なのではないかと思っていたのに、作品創りに対しても本人もとても真面目で硬派な人なのだと感じました。

私の知らない部分の方が沢山あるでしょうし、先生の友達や仲間や恋人や家族しか知らない先生の方が大部分です。

でも、すごくフレンドリーなのは間違いないし(私もそうですが、九州出身の人って割とそういう感じがします)そして先生がお酒で失敗したエピソードも美術予備校時代に聞いた記憶があります。笑

頻繁な手紙のやり取りではなかったけど、2年くらいに渡ってゆっくりと何度かやり取りがありました。

生活費や作品にお金をかけるべきだから、もしかしたら切手代も惜しかったかもしれないのに、と今となっては想像ができます。

脈ありだったのかどうか見極められない

ある時、先生から「写真を送って欲しい」と言われたことがありました。

美術予備校時代の教え子であることは伝えたあったのですが、もしかしたら私の名前と顔が一致していないのかもしれないな……と思いました。

でもなんだか恥ずかしくて写真は送らなかった気がします。プリクラとか入れたのかなあ……忘れてしまいました。

意図はまったくわからないままでした。

そして更には、いつだったか先生からの手紙にドイツの電話番号が書いてあって「もし、電話をかける時は、〇〇〇(先生の名前)プリーズって言えよ」と書いてありました。

ということはシェアハウスか、電話は共同なんだろうなと思ったのですが、その時の私にはドイツの先生に国際電話をかける勇気がありませんでした。

声も聴きたかったかったです。

もし、あの時電話をしていたら。

もし、あの時ドイツまで会いに行っていたら。

ずっと今でも「もし」を、時々考えたりしてしまいます。

時代が時代なら……

当時は手紙くらいしか連絡を取る手段もなく。

私は早くからインターネットをやっていたので、PCのメールアドレスも持っていたのですが、メールアドレスを書いておけばよかったのかどうかもわかりません。

先生から、ドイツで個展をやることになったというお知らせのDMを頂いたのを最後に、私からは返事は書かなくなっていました。

返事を書いていたら何か変わっていただろうかと、ずっとずっと後悔しています。

今のように気軽にメールが送れたり、電話代を気にせず電話をしたり、本人と連絡を取る方法がもっと簡単だったなら、何か変わっていたでしょうか。

私ははっきりと先生に「好きです」とは伝えていなかったですが、確かそれを匂わせる言葉は手紙に書いていました。

スルーされたなというお返事でしたが。笑

きちんと想いを伝えておくべきだったかもしれないな、と後悔しています。

だからこそ、結婚して子供がいる現在もまだ時々は先生のことを考えてしまうのでしょうね。

世界で活躍している今

先生は今は日本画ではなく現代美術作家として活躍をされていて、とある美術館にも作品が恒久展示されています。

世界を舞台にグローバルに活躍されています。

本当に素敵な人で、私の中では「永遠の憧れの君」であり続けていてくれる存在です。

「作品を創り続けていれば、世界のどこかでまた会えるだろう」

と言っていた25年前、本当にそのとおりに世界を舞台に活躍をしている先生です。

そんな先生なので、実はインターネット上に先生が書いた文章やエッセイなどが掲載されていて、この記事を書く時にちょっと調べて読んでみたりしていたのです。

その中で、ドイツ留学をしていた時のことも書いてありました。

長期の旅行に行っている間に、家財道具一式が盗まれてしまったと書いてあったので、私が送った手紙ももしかして盗まれて捨てられてしまったのかなあ(自意識過剰ですね)とか。

そして長期の旅行中に恋に落ち、毎月1000キロ以上の距離をミニで長距離運転をして恋人に会いに行っていたというエピソードも。

あああ、そんな情熱的な一面もあったなんて!!

私はやっぱりどう転んでも失恋してたんじゃないか!!と。

先生がその素敵で情熱的な恋に落ちたのが、私が手紙を送らなくなってからのことでありますようにとだけ願い、もうこの想いには蓋をした方がいいのだろうなと考えている今日この頃です。

ドイツに住む先生からエアメールを受けとって25年、失恋決定ということで。

まさか自分が青森に住むなんて

先生の作品が​十和田市現代美術館に展示されていることを知ったのは14年くらい前でしょうか。

青森県なんて遠すぎて、行くことは一生ないだろうなとその時は思っていました。

私は既に結婚してましたし、十和田市まで行きたいと思っても縁もゆかりもない土地。

夫に断りなく一人で行くことも、夫を誘って行くこともどちらも難しいなと思っていました。

ですが現在、私は縁あって夫の転勤により青森県に住んでいます。

一昨年の夏に、家族で​十和田市現代美術館に行くことができ、先生の作品も自分の目で観て体験することができました。

先生の作品のポストカードを何枚も買ってしまいました。

美術予備校時代の友達に送ろうと思って買ったのですが、まだ送っていません。笑

想い出は美化される

想い出って美化されますよね。

知らないことも多い、知らないからこそ憧れのまま…ということもありますね。

日常。

現実。

もし日常や現実、そうなった時に私は先生のことを好きでい続けられるのだろうか?と思うと、それはわかりません。

「永遠の憧れの君」のまま、今は遠くから活躍を祈り続けています。

またもし私が作品を創るようなことがあった時、先生と再会できるチャンスがあるかもしれないので、痩せておかないといけないなと思いながらポテチを食べてちゃダメですね。