エッセイ

想い出は美化される?~片想いは25年後に失恋へと変わる~①

以前、美術予備校時代の講師の先生のことを書いたのですが、そのエピソードの番外編の話、エッセイです。

単なる私の大昔の片想いの話なのですが、コイバナがお好きなあなたの暇つぶしになれたら嬉しいです。

私が片想いをしていたその方は現在、現代美術家として日本でも世界でもご活躍をされている方です。

私がその方と最後にお会いしたのはもう28年も前だと思います。

彼の留学先まで押しかけて行ってしまえば良かったんじゃないかなと、後悔することも何度もありました。

日本に帰って来ていることを知った時にも、どうにか連絡を取れたら良かったのでは……と思うこともありましたが、結局いつも行動には移せずに終わってしまいました。

今はインターネットなどを通して、ご活躍されている姿を遠くからそっと拝見しているファンの一人です。

その方のことを諦めようと思ってから25年。

私がきちんと告白をすることもなく、25年経って失恋していたんだなということを事実として受け止めたエッセイです。

モテ要素の詰め合わせ

基礎デッサンクラスの講師の先生をしていたその人のことは、高2の冬休みに受けた冬期講習の頃から噂には聞いていました。

「とにかく、女性からモテるだけでなく男性からも人望が厚い」

と、彫刻コースの先生が言っていたのを覚えています。

「ハーレーに乗ってる」とか

「サーフィンをやってる」とか

「剣道をやってる」とか

あらゆるモテ要素を詰め合わせたような人だという予備知識だけがどんどん耳に入って来て、実際にはどんな人なのかは謎のまま冬期講習が終わりました。

私が高2の冬休みに受けた基礎デッサンクラスには、一度も顔を出さなかったのです。

結局どんな人なのか目にすることもなく、その時はそのままその存在を忘れ去りました。笑

どうやら日本画専攻らしい

美術予備校のそれぞれのクラスには「参考作品」という、それまでに美術予備校で描かれた作品の中でも優れた作品を、予備校の後輩たちが参考にするための作品というのがあります。「さんさく」と呼んでいました。

ハーレーに乗っていると噂されていたその先生の作品も、私がいた日本画コースの参考作品の中にありました。

「あー!これ先生のデッサンじゃない?」

左上に苗字が書かれていたので、基礎デッサンクラスから予備校に通っていた子たちは気づいたようでした。

どうやら、その先生とやらは大学では日本画専攻らしいという事を私は初めて知ったのです。

そして「ハーレーに乗っててサーファーだけど剣道部」というギャップありのモテ要素から、ものすごーーーーくチャラい男性を想像していただけに、作品を見た時は本当にビックリしました。

画面の中に空気を感じるようなとても繊細な鉛筆デッサンでした。

「これを描いた人は一体どんな人なんだろう?」

益々、興味がわきました。

見るからにモテそうな人!

日本画コースの現役生のクラスは、毎日学校が終わってからの時間の夕方から実技が始まります。

そして、高1・2年がメインの基礎デッサンクラスは当時は週に3日くらいだったと思います。

時間帯は同じで、パーテーションを挟んで隣のアトリエでした。

ある日、その先生はやって来ました。

「先生~!久しぶり~!!」

と、基礎デッサンクラス時代から予備校に通っていた日本画コースの友達が、先生に話しかけていたのです。

「あ、この人だな」

とすぐにわかりました。

もう見るからに

『本当にこの人は間違いなくモテる人だ!』

というオーラが出ていました。そして

『しかも自分がモテることをわかってるのに、それを表に出さずその上嫌味のない余裕のある感じがすごい!』

初めて見た時に私はそう感じました。

気になる基礎デッサンクラス

先生は日本画専攻ということもあって、たまに隣の基礎デッサンクラスからパーテーションを抜けてこちらを見に来ることがありました。

私もあの人があの繊細なデッサンを描いた人なのか…と気になるようになり、こっそりと基礎デッサンクラスを覗き見るようになっていました。笑

日本画コースから入った私や友達、基礎科から続けている子たちにも分け隔てなくアドバイスをしてくれ、チャラい人なんだろうなというイメージだったのが、すごくフレンドリーな印象に変わりました。

でもまだ『絶対モテる人だから危険』と、警戒してました。笑

ちなみに、藤井風さんにちょっと雰囲気が似ているな~と思っています。身長も同じくらいですね。

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きっかけは夏期講習

夏期講習の間だけ朝9時からの日本画コースの実技の後、夕方からの基礎デッサンクラスでもデッサンの実技を勉強したくて受講しました。

日本画コースの先生にデッサン力付けるためにと勧められたのと、純粋にデッサンの実力を少しでも上げたかったからです。

ある時、絵を描く時の物の見方や考え方がすごくわかりやすくて、先生の言葉がすんなり心に入ってきた出来事がありました。

その日、先生は指導担当の日だったらしく、モチーフはマルスの石膏像でした。

そしてその先生の指導を受ける機会があったのです。

日本画コースの生徒だというのを認識してくれていたので、日本画コースのメンバーのことも気にかけて下さっていたんだと思います。

先生は私の座ってる席に代わりに座って、鉛筆を持ち石膏を見ながら

「形があるんだから、ちゃんと見てあげないとな」

っていう言い方をして手直しをしてくれました。

日本画コースのツンデレ先生からは

「形が見えてねぇんだよ!ちゃんと見ろよ!」

と言われて悩んでいたので、先生に言われたことがきっかけで目の前が大きく開けたように感じました。

「同じこと言ってるのに言い方でこんなに変わるなんて凄い!!」

そう感じて以来、私は先生の魅力の沼に次第に落ちて行きました。

ずっとずっと我慢したんです。

だめだ、好きになっちゃいけない……!

好きになってしまったら、沼にはまってしまう……!

これ、今も推しになるかどうかでもよくある、あるあるパターンですよね。

どうせ沼にハマるなら、早くからハマっておけば良いのにって必ず思うのですよね。

京都の美大の推薦試験はボロボロ

仲の良かった予備校仲間の子(同じ日本画コースの子)と2人で京都の美大の入試のため、二泊三日京都へ行きました。

確か、彼女はその大学では別のことを勉強したいと思ったらしく、日本画専攻の試験を受けていなかったと記憶しています。

彼女から、先生のことが好きだという話を聞いて私は動揺して、実技試験に集中することができませんでした。(若い!)

その大学は集団面接もあり、緊張して自己アピールもうまくできずボロボロで帰りました。

それでも彼女とは京都御所へ行ったり、彼女が行きたいと言った京漬物のお店に行ったり、お昼にお蕎麦屋さんに行ったりしたことを覚えています。

サバサバしてすごく面白い子で、私のことも面白がっていました。

お互い一人っ子でマイペースなところも気が合ったのかもしれません。

でも、私も先生のことが好きなことは、彼女には話せませんでした。笑

抜け駆け

高3の文化祭のときに、ムサビの彫刻科の男の子と友達になりました。

高校の同級生の子たちが、文化祭に遊びにきていた大学生に声をかけられて仲良くなったことがきっかけでした。

同級生と一緒にムサビの芸術祭に遊びに行きました。

彫刻科の男友達にも会いに行きましたが、私はあわよくば先生に会えたらいいな~くらいに思って、学校帰りに行ってみたところなんと偶然にも先生にバッタリ会えたのです!

先生から「明日また来なよ、フリマ出すから」と言われて、翌日も彫刻科の友達のところを尋ねながらも予備校仲間とも行きました。

また先生を探しに。笑

すると、どうやら先生は噂どおり剣道部だったらしく、剣道部で出してる焼き鳥のお店に出入りしたり、フリマを出したりしている様子でした。

先生のフリマではターコイズのアクセサリーやアジア系の小物などを売っていました。

私は先生から1つ、ターコイズのアクセサリーを購入しました。

フリマをしている先生に剣道部の焼き鳥を差し入れしたりもしました。

当時はスマホどころか携帯もない時代だったのでカメラを持参して、先生の写真を撮らせてもらったり、私が先生のことをいいなと思ってるのを知ってる友達に頼んで、先生と二人で写真を撮ってもらったりしました。

もう、なんというか私の中では「会いに行けるアイドル」みたいな存在になっていたのかもしれません。

抜け駆けしておいて、先生のことが好きだと言っていた友達には一言も「私も先生のこと好きなんだよね」とは最後まで言えませんでした。(その彼女とは一緒に芸術祭には行きませんでした)

ラブレターフロムカナダ

後日、予備校でタイミングよく先生と会えた時に、現像した写真を手紙と一緒に渡すことができました。

「ラブレターです!」

って言いながら渡したんですが、別に告白の言葉を書いたわけでもなんでもありません。

確か、夏季講習のデッサンでモチーフの見方を変えることができたことのお礼と、芸術祭が楽しかったということを書いたと思います。

先生は「ラブレターフロムカナダ」を歌いながら受け取ってくれました。笑

後日、先生とまた予備校で会った時には

「おまえ、写真撮るの下手だな~」

って言われましたが、緊張しながら撮らせてもらってたんだよ~って心の中で思いながら先生と笑い合いました。

年賀状

冬期講習よりも前に、日本画の実技が終わって帰ろうとした時に予備校の出口で先生にバッタリ会いました。

少し話ができるような様子だったので、会話を交わしました。

その時、先生に「ハーレーに乗ってるんですか?」と聞いてみたところ

「ハーレーは売っちゃったんだよね、代わりに今はミニ(クーパー)に乗ってる」

と言っていました。

これは最近になって知ったことなのですが、その後、先生はミニがすごく好きになって何台もミニを乗り換え乗り続けているようです。

ちなみにサーフィンのことは聞かなかったのですが、なんとなく先生にサーファーっぽさはずっと感じていました。

「年賀状を出したいので住所を教えてください」

と緊張しながら言って、住所を教えてもらうことができました。

年末、年賀状を出したらなんと!

先生から返事が届いたのです。

綺麗な色をした海中にイルカがいて、バブルリングを出している写真のポストカードで

「人生楽しんだ方が最高!イルカと泳いだ後にサメに追いかけられたぞ!」

と書いてありました。笑

あ、やっぱりサーフィンはどうかわからないけど海に潜ったりする人なんだなとポストカードから知ることができました。

先生からのそのポストカードは、今もひそかに大切に保管してあります。

卒業、そして別れ

そして、その後私は現役で合格ができず高校卒業後に浪人することになりました。

先生はムサビを卒業。

東京都美術館で行われていた五美大の卒業制作展を観に行きました。

先生にはそれ以来会うこともなく、卒業後にどうしたのかもわかりませんでした。

秋のムサビの芸術祭の時に、すごく綺麗で色気のある女性が先生のところへ来て

「フランス良かったよ!フランス行かない?」

と話しかけていました。(私と友達と先生とで話してる時に横から入ってきたんですけどねその女性)

先生は「俺はどっちかというと、フランスよりドイツの方が興味あるかなあ」と話していたことがありました。

(フフフ、振られたねお姉さん……ってみんな思ってましたね)

それ以外にも、先生はネパールにも何度も行ったりもしていたようなので、どこか海外に行くのかなあと漠然と感じてはいました。

その後、私が一浪した年の秋に遊びに行ったムサビの芸術祭にも、なんと先生が遊びに来ていて、またもやバッタリ偶然会うことができました。

「元気か!」と声をかけてくれて「先生も体に気を付けてね」とだけ伝えました。

どこで何をしているのかは聞けず、元気そうな顔を見られてすごく嬉しかったです。

それが、私の記憶の中では先生に会った最後だったと思います。

それ以降、先生には今に至るまで一度も会っていません。

とにかく、今度こそは受験に集中して頑張らないとダメだなと決意しなおしました。笑

②に続きます。